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浅田次郎さん-生き生きと"馬賊"張作霖

中原の虹 清朝末期の混乱期を独自の視点で描いた中国歴史ロマン『蒼穹の昴』から12年。続編の『珍妃の井戸』に続く『中原の虹』がこのほど、第42回吉川英治文学賞を受賞した。馬賊の親玉・張作霖の活躍を生き生きと語る“浅田次郎ワールド”は健在で、全4巻の長編をあっという間に完読、「小説は長さじゃない」と改めて実感した。

――悪女の西太后は民を思う愛国者、張作霖は貧しい民衆のカリスマといずれも日本人のイメージとは全く違う描き方
 「世の中、絶対的な善人も悪人もいないんだよ。西太后も張作霖も西洋史観では悪だけど西太后だって、実際にそんなに悪いヤツだったら一つの国を50年も治められない。総理大臣だって支持率が20%台になればやめろって言われるんだから。流民の子からのし上がって中国の4分の1を自分のものにした張作霖は英雄だと思うし優れた人物だったと思う。何かを覆そうというへそ曲がりではなく僕なりの歴史観から書いた」

――中国にノスタルジーを感じる日本人の傾向が掘り起こされた気分です
 「日本文化は中国文化を母体にしているが、明治の終わりからアメリカに乗り換えて100年。僕もやみくもにハンバーガーが食べたくなったりするような半分アメリカ人。でも、2000年の歴史はバカにならないものでシルクロードなんかにふと郷愁を感じることがある。それは、英米人が感じるオリエンタルとは違うものだよ」

――さらに毛沢東ぐらいまで読みたい
 「書きますよ。まだ折り返しぐらいですから」

――また“浅田節”で中国モノが読めるんですね
 「選考委員にも言われたけど、浅田節って言い方は好きではないんだ。『浪花節か俺は』と思ってしまう。講談調とも言われたけどそれは嫌じゃないんだけどね。平家物語の琵琶法師もそうだけど文学はもともとが読み聞かせの講談だったわけだから」

――またたっぷり泣かされそうですね
 「僕はよくお涙作家なんていわれるけど、読者を泣かせようと思って書いたことはただの1行もない。それより、おもしろく、わかりやすく、美しく書くこと。どれか一つ欠けても二流だ。そのために人間のしがらみに入っていったら、必ず風景描写を描くことを三島(由紀夫)さんから学んだ。花鳥風月を書かないと日本の小説じゃないよ」

――96年の在ペルー日本大使公邸占拠事件では、人質の方々が『蒼穹の昴』に生きる勇気を与えられたと話題になりました
 「光栄ではありますが、世の中にはもっとおもしろい、生きる力を与えてくれる小説はある。でも、読まれた理由はわかるぜ。いつ殺されるかわからないという辛い現実を忘れたい、物理的に長い読み物であるという2つの条件を満たしていたからでしょう」
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【物語】
 天涯孤独の貧しい流民の子からのし上がった青年、張作霖は、「満州の王者…東北の覇王たれ」というシャーマンの予言通り、やがて奉天一体を支配する馬賊の長となり、中原の北京をめざし長城を越える。
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あさだ・じろう
 1951年、東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞受賞。著書多数。『壬生義士伝』(柴田錬三郎賞)など映画化された作品も多い。


「中原の虹」

投稿日: 2008年05月02日

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