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後楽園球場なき今、プロ野球のメッカは甲子園

■江尻良文編集委員「球界に直言!」
 ゴールデンウイークは、かつてプロ野球界の衣替えの季節でもあった。巨人もこの時期はデーゲームで、5月の心地よい風と陽光を浴び、世界の王は半袖のアンダーシャツでたくましい二の腕を見せつけながらホームランを打つ。後楽園球場のスタンドには少年、少女ファンの姿が目立つ。

 「子供たちのためにホームランが打てるといいね」という約束通り、憲法記念日に通算9本塁打、こどもの日には6本塁打の記録を残している。取材する我々記者の方も長袖から半袖のポロシャツなどに着替え、気持ちの良い汗をかく。が、ドーム球場ではこうはいかない。いつも適温で、季節感がなくなってしまう。

 後楽園から東京ドームになって失われたのは、それだけではないだろう。「甲子園が高校野球のメッカ(聖地)なら、神宮球場は大学野球のメッカだし、後楽園球場はプロ野球のメッカだ」といわれたものだが、それも死語になった。日本プロ野球界にV9という不滅の金字塔を打ち立てた、人気、実力ともにダントツのナンバーワンの巨人の本拠地だったから「プロ野球のメッカが後楽園球場」だったのだが、後楽園球場そのものの素晴らしさも輝いていた。

 「本当に良い球場だった。内野にも素晴らしい見事な天然芝が張られ、文句なしの日本一だった」と懐かしむオールドファンも多い。松井秀喜が巨人からヤンキースへFA移籍するまでの経緯で、「ケガを恐れないで全力プレーできるメジャーの天然芝の球場に憧れる。東京ドームも天然芝にしてほしい」と発言。「お金がかかりすぎるので、いくらなんでもそれは無理だ。天然芝に一番近い最新式の人工芝にする」と球団首脳が松井を慰留したが、成功しなかった。

 松井の言う通りで季節感のあふれる野外の天然芝の球場が一番だ。今の日本のプロ野球の球場でメッカの資格があるのは甲子園だ。12球団ナンバーワンの観客動員力を誇る阪神にふさわしい球場といえる。今季、レトロな感じをそのまま残し、改築、新装開店したのも良かった。日本プロ野球界の不滅のスーパースターONも大の甲子園ファンを自任している。

 「阪神との伝統の一戦は特別な思いがあるが、とくに甲子園で戦うあの独特な雰囲気はたまらない。甲子園は本当にいいよ」。異口同音にこう絶賛する。早実時代に甲子園で優勝投手になったことから、プロでスーパスターの道を歩むことになった世界の王、王貞治。「千葉の田舎、カッパ伝説があるような印旛沼で育ったオレには甲子園なんて夢の夢だった」というミスタージャイアンツ、長嶋茂雄も、現役時代だけでなく、監督になってからも甲子園に魅了され続けていた。球場入りするとすぐにグラウンドへ出たがったほどだ。

 ただ天敵の阪神・野村克也監督時代の3年間だけは例外だったのがこれまた面白い。阪神の練習が終わり、野村監督の姿が消えるのを確認するまでは甲子園の土を踏まず。ベンチ裏で今か今かとイライラしながら待っていた。それだけ甲子園が好きだったのだ。天下のONも魅了されている甲子園球場。現在のプロ野球のメッカと認定しても異論はないだろう。

投稿日: 2008年05月11日

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