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「言葉のタネ明かし」乗るかそるか-仮名書きにしておけば
「乗るかそるか、一発勝負の脱サラで、店も1年もてば恩の字といった程度の気持ちだった」。どこかのミニコミ紙に載っていた文章と記憶している。さて、2カ所の誤字にお気づきだろうか。
まず、「のるかそるか」は、漢字で書けば「伸るか反るか」になる。「長く伸びるか、反対側に反り返るか」の意で、そこから「成功するか失敗するか」「いちかばちか」の意味で使われるようになった。
「(事業が)軌道に乗る」の意識があったため「乗る」と書いたものかもしれないが、「のるかそるか」と仮名書きにしておけば恥をかかずに済んだのである。
いまひとつは「恩の字」の「恩」。これは「御」でなければならない。「御(おん)の字」はもともと江戸期に遊郭で使われていた表現とされ、「御礼」などと敬意を表す際に用いる「御」の字をつけたくなるほどありがたいもの、といった意味をもつ。「御の字」は今でも盛んに、「今度の昇給は3000円もあれば御の字だな」などと使われている。
「恩の字」と書いた人の頭の中には、「ありがたい」の思いとともに、「恩に着る」といったような表現がちらと浮かんだのかもしれない。
このように正しいと思い込み、平気で誤字を書いてしまうケースはけっこうある。まめに辞書をひくことである。
(産経新聞大阪編集局校閲部長 清湖口敏)
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