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FAの人的補償、廃止なんてとんでもない
■江尻良文編集委員「球界に直言!」
パ・リーグの首位・西武の立役者の1人になっている新左腕エースの石井一久。開幕から快進撃、セ・リーグの首位を快走する阪神の新3番・新井貴浩。好位置をキープして追撃する中日の新3番・和田一浩。FA移籍した3選手がそれぞれ持ち味を発揮して、新天地でチームの原動力になっている。
同時に見逃せないのが、人的補償として移籍した選手の活躍だ。西武・石井一の代わりにヤクルト入りした福地寿樹。「快足だし、守備も素晴らしい。スタメンでつかってみたい魅力がある」と惚れ込んでいた高田監督は実際にスタメン起用もしている。阪神・新井の交換要員の広島・赤松真人も、同様に俊足ぶりをブラウン監督に買われ、トップバッターに抜てきされ、高い評価を受けている。阪神時代は第二の赤星と期待されながらも伸び悩んでいたのがウソのようだ。中日・和田の人的補償の岡本慎也は貴重な中継ぎ要員として起用されている。
FA移籍した選手だけでなく、人的補償の選手が新天地で働いているのは、人材不足の日本プロ野球界にとって万々歳だろう。昨年は巨人へFA移籍した門倉健の人的補償として工藤公康が横浜入りして人気を集め、7勝をあげている。ところが、労組・日本プロ野球選手会(宮本慎也会長=ヤクルト)はFA資格取得期間短縮要求だけでなく、人的補償の廃止を求めている。
事あるごとに「移籍の活性化」を声高に求める選手会なのに、言行不一致というしかないだろう。FA移籍選手の人的補償として新天地に移り、活躍の場を与えられている現実を目の当たりにすれば、廃止など口にするのは矛盾している。
「選手会はお題目のように移籍の活性化を訴えるが、実際にそうしようとすると、腰を引く。何年も前から『トレード期限を6月30日から1カ月延長して7月31日までにしよう』と提案しているのに、態度をハッキリさせない」。ある球団関係者は選手会の「移籍の活性化」要求のあいまいさを、こう証言している。
FA選手を獲得できる球団は巨人、阪神、中日など限定されている。西武が石井一を獲得できたのは、ポスティングでレッドソックス入りした松坂大輔の落札金60億円があったからで例外的なケースだ。FA選手を取られるだけの多くの球団は、補償金だけでなく、人的補償もほしいだろうし、選手のサイドからしても、新しい働き場は悪い話ではないはずだ。
「FA移籍を活発化するためには、人的補償を廃止するだけでなく、補償金も減額すべきだ」という選手会の要求は、ごく一部の高く買われるFA選手を利するだけで、移籍の活性化にはつながらない。
「そもそも日本にFAを導入する際の話は違っていた。選手会は『働き場のない選手たちに活躍の場を与えたい』と言っていたはずなんだ。それなのに、実際は一部選手がバカげた高額なお金を手にするための制度になってしまっている」
こう憤慨するのは、ソフトバンク・王貞治監督だ。一流選手はメジャー入りしてしまう今の日本プロ野球界にとって限られた人材はフル活用するしかない。FAの人的補償は立派な移籍の活性化になっている。廃止なんてとんでもない。




