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瀬名秀明「イヴのみる夢」(33)-他者の痛みが分かる「感情移入」能力
大切な人のことを思って胸を痛める。周りの空気が読めない同僚に気疲れする。私たち人間は他者がどう感じているかを察し、理解する「感情移入」という能力を持っていて、これは成長し社会の一員となるにつれて獲得してゆく高度な情動だ。どのように私たちは他者の痛みを我が事のように感じるのか。チューリヒ大学のタニア・シンガー教授が次々と面白い研究を発表している。
女性のペアに実験に参加してもらい、ひとりに電気ショックを与える。もうひとりはそれを見ているときの脳活動を測定する。友人の痛みを心で感じているとき脳の前側島と前側帯状領域が活性化することを、シンガー教授は見いだした。この部分は自分が痛みを感じるときでも他者の痛みを感じているときでも共通で活動する。これが感情移入のルーツだとシンガー教授は推測している。
さらにシンガー教授は興味深い研究をおこなった。今度は男性のペアに協力してもらい、ふたりで経済ゲームをやってもらう。このとき相手がフェアプレーするかアンフェアか条件を変えた上で相手に電気ショックを与える。するとこちらの脳活動はどうなるか。
相手がフェアプレーのときは痛みを感じる感情移入の脳活動が活性化した。しかしアンフェアだと思われる場合はこの感情移入領域の反応ががくんと落ちたのだ。
つまり少なくとも男性において、感情移入の度合いは相手の社会行動の評価によって形成される。相手をフェアと感じるかどうかで、男性は思い入れを変えてしまうのだ。
相手をアンフェアだとあえて思い込むことで、相手を突き放して攻撃的態度に出てしまうことはよくある。自分の過去を振り返ってみて、思い当たるという人は多いのではないだろうか。そのとき私たちは感情移入という能力を無意識のうちに圧し殺していたのだ。
他者の痛みがわかる人は社会性豊かな大人だ。今後の脳科学はその素晴らしい能力をもっと引き出してくれるだろう。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(32)セクシー美女が大バクチを呼ぶ
(31)骨伝導で語学学習や音楽を堪能
(30)体格と性格の相関をメタボ対策に応用
(29)お菓子感覚でキッズサプリ
(28)ご飯のお供にワクチンふりかけ
(27)歩くだけで5ワット! 人体発電機
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
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(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
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(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
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(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
