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清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(3)USJ(下)
USJの経営が好循環をたどり始めたのは、なぜだろうか。テーマパーク経営の専門家であるグレン・ガンペル社長がアメリカからやってきて、入園者がエキサイトするようなアトラクションやショーを次々と導入したからだろうか。実はことはそう簡単ではない。
いささか理屈っぽくなるが、テーマパークの経営はパークのコンセプト(テーマ)に合わせて魅力的なイベントやショーを次々と展開、そこにキャラクターを介在させて入場者(ゲスト)を誘引、何度も来てくれるリピーターとし、入場者数を増やしていくことで成立する。陳腐化したアトラクションでは人は来てくれないわけだから、新たな設備投資を繰り返すことが大事になる。その意味で、きわめて大きな設備投資型産業であり、お金のないパークは先細りにならざるをえないということだ。
だとすると、USJにお金がなかったならば、いかにガンペル氏が優秀なテーマパーク経営者であっても、投資はできず、入場者を増やすこともできなかったということになる。
現実に2004年6月、ガンペル氏がやってきたとき、USJは借金漬けの状態にあり、大阪市からの資金援助なしには、投資どころか運営さえおぼつかない状況に陥っていた。ガンペル氏のとったUSJ再生策は、ひとつがパークのテーマを日本の市場に合わせ「ワールドクラスのファミリー・エンターテインメント」へと切り替えることであり、もうひとつは投資に必要な資金の捻出だった。彼が最終的に選んだのはアメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスの金融再生スキームであった。
「ガンペルが就任すると、まず資金の問題がクリアにされた。そのうえで複数の金融機関と話し合いをし、05年の年明けでしたか、ゴールドマンが噛んだ金融面での再生スキームが明確になった」
柴田俊一IR室長は、おおよその動きをこのように語る。
USJは開業時に1250億円の借入金があり、毎年返済する元利合計が100億円に達していたとされる。金利は今日に比べるとかなり高かった。
そこでゴールドマンは大阪市の持ち株25%を数十%余にまで減らし、市の融資230億円を11年間塩漬けにする一方、自社と日本政策投資銀行などを対象とする250億円の優先株による第三者割当増資を実行。この資金を返済に充てて借入金を大幅圧縮する一方、借入金もより低利のものに借りかえ、返済金額をさらに圧縮するスキームを作成する。もちろん名にしおう投資銀行だ。さまざまな形でリスクヘッジを行う一方、成功報酬はしっかりいただく仕組みになっていた。
現在、USJの筆頭株主がゴールドマン・サックスの子会社で、持ち株比率が4割を超えることを見れば、成功報酬の大きさが分かろうというものである。上場もスキームのなかに入っていた。値上がり益に加え、株はいつでも売却できるからだ。
「上場で当社も資金調達が多様化でき、ブランド価値も高まった。ストックオプションが導入され、社員の士気も上がった」と柴田室長は、USJ側のメリットを語る。それに、ゴールドマンがハゲタカでも何でもいいが、大阪市の無能な役人たちが残した借金をあらためて市民に回さずにすんだし、年間900万人を集客するUSJの経営健全化は市の経済に着実な恵みを与えていることも確かだ。雇用効果も大きい。
が、問題が何もないわけではない。USJでは04年1月の「スパイダーマン・ザ・ライド」以降、大型投資がないのだ。今春の「ファンタスティック・ワールド」も含め次々と投資はしているが、規模は小さい。
田中功取締役が語るように「マーケティング面で調査をしっかりやって、導入を決めている」こともあり、目下のところ評判は悪くない。が、何しろ相手は目利きの関西人だ。ひとつ間違って「USJは投資をけちっている」ということになれば、すぐ人気離散ということになりかねない。
大株主ゴールドマンの金勘定とテーマパークのプロ経営者ガンペル社長のプロフェッショナリズムが、そこをどう読み、次なる発展図式をどう描くか。USJの明日はなかなかエキサイティングである。 (経済ジャーナリスト)
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開業7周年を迎えるUSJは、東京ディズニー・リゾート(TDR)に対抗する西の大型テーマパークとして、初年度1100万人の入場者を数えた。潜在入場者はそれくらいいるわけだが、現在は900万人。対してランドとシーの2つのパークを擁するTDRは2542万人(08年3月期)。
テーマはTDRが「あらゆる世代の人々が楽しめるファミリー・エンターテインメント」で不変。対してUSJは「ワールドクラスのファミリー・エンターテインメント」へと寄せてきている。アトラクション投資に関しては、TDRが06年9月の「タワー・オブ・テラー」の210億円をはじめ、毎年、相当額の投資を続けているのに対し、USJは小規模にとどまる。
加えて、TDRを運営するオリエンタルランド社は早ければ11年以降に、ディズニー社と協力して、首都圏以外で「都市型・屋内型パーク」をオープンさせるとしている。ロケーションによっては、USJの集客に影響を与える可能性もある。
■清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(1)USJ(上)
■清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(2)USJ(中)

