TOP > 「黒革の手帳」松本清張著(1980年刊・新潮文庫・上、下各540円)

「黒革の手帳」松本清張著(1980年刊・新潮文庫・上、下各540円)

黒革の手帳 銀座の高級クラブを舞台に、女のしたたかさを描いた本書は、近年もドラマや舞台化され、人気再燃した。だが、サラリーマンには、なじみのない高級クラブの話より、部下が横領したら上司はどうなるか―という読み方のほうが身に迫る。

 主人公は東林銀行千葉支店預金係で34歳のベテラン行員、原口元子。上司で次長の村井亨は、元子に仕事を任せては勤務中に私用で抜け出し、見返りもない。悪心が頭をもたげてくる。

 脱税目的の匿名の架空預金に目をつけた元子は複数の口座から総額7500万円を引き出し、着服する。これが支店長と村井に発覚。村井は「君は支店長やぼくの信頼を裏切った」と責め、支店長も「三分の一はね、返してほしいんだ」と哀訴するが、元子は、警察に突き出すならどうぞ、架空預金者名を書いた黒革の手帖も押収されますよと居直る。支店長らは屈服する。

 退行した元子は銀座にクラブを構え、さらに老舗クラブ買い取りの資金に、黒革の手帖の中の1人から5000万円を脅し取るが、罠にはまる。仕掛けたのは変わり果てた村井らだった。元子の件で左遷、退行した村井は総会屋に養われる身。部下に運命を狂わされた上司…。悪いのは誰か。
 (文芸コラムニスト・長野祐二)

「黒革の手帳」

投稿日: 2008年06月16日

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