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『ハゲタカ』真山仁著(2004年刊・講談社文庫・上820円 下770円)
三葉銀行の芝野健夫は米国勤務から帰国後、M&A(企業の合併・買収)部門を経て、資産流動化開発室長に任命された。
「行内の不良債権処理を進めるべきだ」という彼の主張がいれられたのだ。彼は日本経済の見通しにも辛口で、「行内一のペシミスト」の渾名があった。
室長の仕事はバルクセールの促進。さまざまな債権をバルク(袋)に入れ、適正価格で買い取らせる。買い手が現れた。米国のバイアウト(買収)専門の投資会社の日本法人で、社長が鷲津政彦。
鷲津は米国でジャズピアニスト修業中、商才を買われ、投資会社にスカウトされた変わり種。東大卒で、堅実なサラリーマンの芝野とは対照的。2人に共通するのは企業再生をライフワークと考えるところ。
バルクセールで2人は対立。簿価総額のわずか10分の1の買い取り価格で鷲津に押し切られた。まさに弱肉強食の取引。芝野はほぞをかむが、鷲津こそ米国のバルチャー(ハゲタカ)・ビジネスの旗手で、日本を改革しようと乗り込んできた男だった。
芝野は銀行の事なかれ主義に反発、退行して友人の会社の再生に賭ける。「私達はハゲタカですよ。金と死に体企業の匂いは逃しません」と吠える鷲津に芝野はどう対抗するのか。鷲津が語るある因縁話が金融界の闇の深さを感じさせる。
(文芸コラムニスト・長野祐二)
