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日本の病巣~ひきこもる大人たち(12)不安が先行する30~50代は注意

 「家から出られない」 「会社の前で体が動かなくなる」―自立した大人がそんな身体状態に陥って、引きこもり状態になるのはなぜなのか。

 神経生物学の観点から、高次神経機能の解明を行っている東北大学大学院医学系研究科の曽良一郎教授は、こう説明する。

 「不安は、欲求が強ければ強いほど起こるもの。会社に行けなくなるのも、会社に行きたいという強い気持ちの裏返しなんです。動けないのは、強い心理規制が働いて、不安が先に立つことが多いから。ひどくなると、気持ちが落ち込んだり、不安を感じるエネルギーすら残らなかったりします」

 曽良教授によると、引きこもり状態の社会人を調べてみると、うつ病や神経症の人が多いという。
 「大人の引きこもりが増えているのは、それらの病気が蔓延化しているからではないでしょか」
と、曽良教授。

 うつ病と診断されるケースは、睡眠障害、食欲減退、性欲減退などの身体症状が出るなどの体の病気に近く、30代から50代に増えてくるという。その中でも「不安が強いと、引きこもるのではないか」と指摘する。

 一方、不安が強い人は、不安神経症の分類に入る。会社に行って、きちんと仕事したいが、自信がないから行かない。睡眠障害がある。ただ、食欲や性欲の減退はない。シンプルに、不安だということだけが先行するのだという。

 「きっかけは、転勤、昇進、異動などの職場環境の変化。少しずつ眠れなくなって、ストレスが積もり積もると、ある日調子が悪くなる。極端なケースでは、そのうち『生きていてもしようがない』『死んでしまおう』と思い、自殺へと追い込まれるのです」

 とくに、技術者や研究職は「100%の力を出し切れないと働きたくない」という自己抑制が強い。「気分が沈む」「寝つきが悪くなった」「趣味を楽しめなくなった」などの症状が表れる。自覚するのは、半年くらい後。家族が慌てて本人を連れてくるケースが多い。

 「以前に勤務経験があるなど、社会機能が高い人なら、的確な治療を受けられれば、比較的治りやすいのではないか」
 社会復帰は、家族や会社の理解、サポートにかかっているようだ。

 次号、脳の専門家がメカニズムに迫る。

日本の病巣~ひきこもる大人たち(1)
日本の病巣~ひきこもる大人たち(2)
日本の病巣~ひきこもる大人たち(3)
日本の病巣~ひきこもる大人たち(4)残業中、緊張の糸が切れ
日本の病巣~ひきこもる大人たち(5)会社の流れに乗り損ね
日本の病巣~ひきこもる大人たち(6)正義感がアダ、こじれる関係
日本の病巣~ひきこもる大人たち(7)上司の詰問に涙…
日本の病巣~ひきこもる大人たち(8)皆がパソコンに向かい無言
日本の病巣~ひきこもる大人たち(9)ネット生活で素リズム狂い
日本の病巣~ひきこもる大人たち(10)進まぬ再就職… 次第に無気力に
日本の病巣~ひきこもる大人たち(11)心の病は完治待つより職場環境の中で治療を

投稿日: 2008年06月30日

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