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瀬名秀明「イヴのみる夢」(34)-未来の福祉ロボットのヒント
家族や介護者とお互いに顔を見ながら食事をする。相手の笑みがわかるし、会話も弾む。この当たり前の幸せを商品にして成功を収めたのが警備保障会社のセコムだ。大学で知能ロボットを学んだ石井純夫さんはセコムで食事支援ロボット「マイスプーン」を10年以上かけて粘り強く開発した。
頸髄損傷や筋ジストロフィーの患者さんは、自分でスプーンを持ってものを食べることが難しい。介護者は後ろから手を回して、二人羽織のように食べさせてあげる必要がある。自分のペースで食べられないし、相手の顔を見ることもできない。そこで石井さんはジョイスティックの操作だけで食事できるロボットハンドをつくった。まず重箱の中に料理を入れる。このとき一口サイズにあらかじめおかずを切り分けておくのがポイント。
顎(あご)か足でスティックを軽く前後左右に動かすと、机上のロボットハンドが動いて先端のフォークとスプーンで料理をつかみ、口元まで持ってきてくれる。このとき上のフォークがそっと後退して、下のスプーンに載った料理が差し出されるのが第2のポイント。
実際に体験してみると本当に食べやすいのがよくわかる。これなら相手の顔を見て食事が可能だ。コンパクトで心優しい設計思想が評価され、経産省が選出する「今年のロボット大賞2006」優秀賞にも輝いた。いまは購入助成で定価の1割の値段で購入できる。
「石井さんの福祉マインドは人並み以上、技量はほどほど、それがよかった」とセコムは石井さんを評価する。ここに未来の福祉ロボットのヒントがありそうだ。勉強しながら一歩ずつ、できることを開発し、安全を目指す。少数の患者さんへの支援ロボットでもきちんと売れるように皆で助成する。
海外と日本では病院の構造も大きく違っているので、医療・福祉ロボットの規格がどのようになるのかまだ予断を許さない。
だが、よい商品ができればそれが世界の基準になる。未来の福祉ロボットの基準は日本がつくり、世界へどんどん輸出したいものだ。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(33)他者の痛みが分かる「感情移入」能力
(32)セクシー美女が大バクチを呼ぶ
(31)骨伝導で語学学習や音楽を堪能
(30)体格と性格の相関をメタボ対策に応用
(29)お菓子感覚でキッズサプリ
(28)ご飯のお供にワクチンふりかけ
(27)歩くだけで5ワット! 人体発電機
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
