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瀬名秀明「イヴのみる夢」(36)-感情スイッチで皮膚に紋様
20年後の世界。驚くような歌姫の登場に人々は沸き立っていた。彼女は素晴らしい歌唱力の持ち主でもあるが、まさに歌がクライマックスに上りつめるとき、腕や頬の皮膚に天使を思わせる紋様がうっすらと現れる。まるで天使が彼女を祝福しているようだ。実はこれは最新の皮膚科学が生んだ成果で、世界はこの新しいファッションに夢中になる。
皮膚は脳や内臓に続く「第3の脳」である、とは資生堂ライフサイエンス研究センターに勤める傳田光洋博士の言葉だ。身を守るだけと思われていた皮膚に、驚くほど多彩な役目があることが近年わかってきたのである。
表皮細胞はやがて古びて垢となってはがれ落ちる。しかしその表皮にはTRPと呼ばれる種類のセンサーがいくつもあって、温度や湿度をつねにモニターし、皮膚を健康に保っていることが解明されてきた。
温感のセンサーは唐辛子の成分にも反応し、冷感のセンサーはメントールにも反応する。だから唐辛子は熱く、メントールを塗るとスッとするのだ。しかもセンサーは角質が垢としてはがれ落ちるごとに新しく更新される。だから私たちはいつでも敏感なセンサーを持てるのだ。
さらに皮膚は電池のようにプラスとマイナスの電位差があり、細胞の放出する物質によって影響を受ける。DNAの大量複製法を考案してノーベル賞を受賞したキャリー・マリス博士は、なんと自分の皮膚電位を自在に変化させるワザを持っているそうで、「プレイボーイ」のヌード写真を見るだけでなぜか電圧が下がる。そこで自分の皮膚にアンプをつけて、家の電灯のスイッチをオンオフしてみせたとか。
皮膚のセンサーは感情に敏感に反応する。ちょっと空想的ではあるが、将来は皮膚の再生を制御して若々しさを保つだけでなく、電圧の変化に敏感な色素を埋め込んで、発色させることさえできるかもしれない。
皮膚の感覚はひとりひとり敏感に違うはずだ。個性的なファッションが生まれそうである。タトゥーの次は科学でアート!?
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(35)蛇のように膜でドライアイ防止
(34)未来の福祉ロボットのヒント
(33)他者の痛みが分かる「感情移入」能力
(32)セクシー美女が大バクチを呼ぶ
(31)骨伝導で語学学習や音楽を堪能
(30)体格と性格の相関をメタボ対策に応用
(29)お菓子感覚でキッズサプリ
(28)ご飯のお供にワクチンふりかけ
(27)歩くだけで5ワット! 人体発電機
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
