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日本の病巣~ひきこもる大人たち(8)皆がパソコンに向かい無言


 大手企業に勤める30代後半の関口さんも、会社の玄関をくぐれなくなって、休職した。専業主婦の妻がいるのに、ここ最近は引きこもりの生活を送る。
 関口さんは、支店から本社に転勤してきた。しかし、本社の周りの雰囲気は、皆がパソコンに向かっていて、音もなくシンとしている。誰も雑談もせずに、それぞれ自分の仕事に向かっているからだ。関口さんには、アットホームで気軽に話のできた支店と違い、そのよそよそしさが「耐えられなかった」という。

「3年間、本社でがんばれば、昇進できるから…」ともいわれていた。 しかし、朝、出社すると、そんな職場の雰囲気に、体が震えるようになった。そのうち、玄関にさえ入れなくなって、突然、無断欠勤が始まってしまう。

 「原因を調べていくと、雰囲気や場所に反応していることは、意外に多いんです。事故や事件に遭った場所を通ると、昔の体験が蘇るトラウマに似ていますよね。だから、会社に近づいてきて、建物が見えただけでおびえて、体が動けなくなるのです」と、産業カウンセラーは説明する。ヘビににらまれたカエルのようなものだ。学校で試験中、トイレに行きたくなる過敏性大腸症候群にも似ているかもしれない。

 それでも、関口さんは当初、出勤時間になると、家を出ていた。彼の妻も、会社に行っているものとばかり思っていたという。しかし、玄関の前まで来ると、どうしても入れない。結局、公園などで時間をつぶし、帰宅時間が来ると、家に帰っていた。気づいたときには、もう後戻りできない状況になっていたようだ。

 「やはり、会社に行くと、交流があることが支えになっていることも大きい。そうした職場のファミリーのような人間関係が、日本の企業を支えてきた。しかし、終身雇用システムが崩壊して、いまは皆、自分の課題で精いっぱい。上司も自分の成果を出さなければならず、余裕がない。成果主義の流れが、これまでの個々のつながりを寸断し、他人を気遣うサポート体制も崩れてしまったんです」

 これまでの会社員なら、個人を殺し、上司や会社の理不尽にも耐え、適応していくことが当たり前だと信じてきた。しかし、こうした会社を拒否する身体症状は、1つの主張なのか。

 次回、家族の影響を検証する。

日本の病巣~ひきこもる大人たち(1)
日本の病巣~ひきこもる大人たち(2)
日本の病巣~ひきこもる大人たち(3)
日本の病巣~ひきこもる大人たち(4)残業中、緊張の糸が切れ
日本の病巣~ひきこもる大人たち(5)会社の流れに乗り損ね
日本の病巣~ひきこもる大人たち(6)正義感がアダ、こじれる関係
日本の病巣~ひきこもる大人たち(7)上司の詰問に涙…

投稿日: 2008年06月03日

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