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伊坂幸太郎さん-読者をハッピーにする“伊坂ワールド”
毎回主な文学賞の候補になっては大賞を逃してきた若手実力派、伊坂幸太郎さんが本屋大賞と山本周五郎賞をダブル受賞した。首相暗殺犯に仕立てられた主人公が巨大な何かから逃げて逃げて逃げ続ける物語『ゴールデンスランバー』。軽快でシリアス。ユーモアあり、ちょっと泣けて温かい。根強いファンを巻き込みふくらみ続ける“伊坂ワールド”の作り方に迫った。
――ノミネートされ続け、見事受賞されました
「うれしいですが、1位とかあまり得意じゃない。候補になっては落ちる芸風も嫌いじゃない。準優勝とかで『何だよ、おれの方が面白いのに』ってグチグチ言っている方が気が楽。僕の本を本当に喜ぶ人には逆に届かなくなるような気もして、たくさん売れることへの恐怖心がある」
――ビートルズの曲を作品名にしたのは
「すごく好きっていうのもあるが、最初は語感。ハリウッド映画みたいなのをやりましょうと話していて『ゴールデンスランバー』(黄金のまどろみ)って音がハリウッドっぽいなって単純なところから」
――首相暗殺犯にされる舞台設定は
「逃亡者ものをやろうとして真犯人捜しになるととたんに物語が小さくなる。犯人が分からない事件といえばケネディ暗殺のような大事件。じゃケネディを完全になぞっちゃえと。逃げるところだけを読んでくださいという感じにした」
――主人公は得体の知れない相手から逃げ続ける
「僕は闘う人の方が好きだけど、どうにもならないときは逃げるという選択肢もあってほしいなっていう思いがこれを書くとき結構強かった。闘えない大きなものにぶつかったとき人生を損なわない方法として」
――大半の作品の舞台が仙台なのは
「歩いて街に出られて何でもそろっていて自然もあってすごく好きな街。学生のころから暮らしている。作品に使うのは知っている街だからウソをつきやすいということがある」
――伊坂作品の中でよく人が殺されるが
「僕の作風って優しい感じにとられ、うそくさくなるんで、不穏な空気を混ぜたくなる。でもそれで誰かが傷つくかもしれないとなると悩んでしまう。だんだん人の死に神経質になってきている。最近は読むからにはハッピーな気持ちにという思いが強い」
――ハッピーな気持ち?
「以前、井上ひさしさんに会ったとき『嫌なこと、辛いことは生きているだけで経験できる。人間無理して作らなければいけないのは笑いだ』って言われた。人間って愚かだとか、世の中って辛いとか言われなくても分かる。お金を払ってフィクションを読むなら『辛い話だったけど、明日も頑張ろう』『明日も会社行こう』みたいな気持ちになれるものがいいなって思うようになった」
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いさか・こうたろう
1971年千葉県生まれ。東北大卒。2000年に『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。04年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を受賞した。

