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『聖者は口を閉ざす』リチャード・プライス著、石井朗訳
アル・パチーノのシブい演技が冴える映画「シー・オブ・ラブ」の脚本家が書いた小説。2段組550ページと厚く、ずしりと重い。最後まで読み通して、「けっして急がずゆっくりとお読みください」という帯文の意味がよく分かる秀作だ。
43歳のレイモンドは、貧困と荒廃に覆われた故郷に戻り、創作講座の講師を務めるが、ある日、何ものかに襲われ、瀕死の重傷を負う。この事件を捜査することになったのが、幼なじみの女刑事ネリーズ。レイモンドの回想とネリーズの捜査で、一人ひとりの人生が描き出され、事件の真相が徐々に明らかになっていく。
派手なところはまったくない小説だが、淡々としたなかに、一言一言に重みのある言葉が光る。親子関係、愛情、仲間、人に優しくするとはどういうことなのか。こうした感情がしみじみと伝わってくる作品なのだ。著者の他の作品も読みたくなってくる。 (文芸春秋・3675円)

