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「言葉のタネ明かし」拉致-誰もが読めるのは何とも複雑な気が…
暫定税率や後期高齢者医療制度の問題が騒がれるなかで、北朝鮮による「日本人拉致」が政治課題の隅っこに追いやられたような感があり、まことに残念である。どこかの将軍サマは大喜びだろうが…。
ところで、「拉致」を「らち」と読むのは誰でも知っていると思われるが、では漢和辞典で「拉」の字をひいたら、そこに「ら」の読みは出てくるだろうか。
恐らく出てこないだろう。「ろう」の音とともに、慣用音と示したうえで「らつ」の読みを載せている辞書が大抵かと思われる。そこで私たちは、「らち」は「拉致」の本来の読みではないことに気づくはずである。そう、「拉致」は本来「らっち」と読むのである。
日本国語大辞典や広辞苑は、それまでは本来の「らっち」を本見出しに、「らち」をカラ見出しに立てていたものを、平成10年以後の改訂で逆転させ、「らち」を本見出しに“昇格”させた。その理由は、あくまで想像ではあるが、オウム真理教による「拉致」事件が社会的に大きな関心を呼び、誰もが「らち」と発音するのを辞書も無視することができなくなったからかと思われる。
北朝鮮やオウム真理教の犯罪によって、「拉致」が誰にも易々と読まれるようになったのには、何とも複雑な気がしてならない。
(産経新聞大阪編集局校閲部長 清湖口敏)
■その他の「言葉のタネ明かし」
「ぞっとしない」 「死亡」 「伸るか反るか」 「汚名挽回」 「蛙の子」 「嘘」 「悲喜こもごも」 「口腔」
