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ロボットスーツ「HAL」がつなぐ 人間との共存

HAL ハイテク立国を目指すニッポンの産業界で、俄然注目を浴びているのがロボット。なかでも、近くリースも始めるサイバーダイン社(茨城県つくば市)のロボットスーツ「HAL(ハル)」は注目度ナンバーワンだ。装着するだけで体が思いのまま動き、自力の何倍ものパワーが出せる。近い将来には医学や行動科学などとのコラボも目指すというHALが描く夢とは―

■人間を支援する
 カシャッ、カシャッ―専用下着を着た男性が、HALをゆっくりと身に着けていく。腕と脚にある操作ボタンを押して起動を開始。

 手始めに、両腕で約80キロもの荷物をヒョイ! 続いて歩行だ。装着した人の思い通りに力強く歩いてくれる。

HAL 2006年にはHALを装着した理学療養士が頚椎損傷で体が動かない人をおぶってアルプス登山に挑戦した実績もある。

 「HAL」といえば、故アーサー・C・クラーク著「2001年宇宙の旅」に出てくるコンピューターの名前だが、日本のHALの生みの親であり筑波大学院教授、そして同大学発のベンチャー企業、サイバーダイン社のCEOでもある山海(さんかい)嘉之さんは「そうではない」と言う。

 こちらのHALは「Hybrid Assistive Limb」の頭文字の略。手足となって人間をサポートするロボット、の意味だと。

■人間と機械をつなぐ
 HALは人間の持つ機能を徹底的に研究して開発された。「人が脳の指令を受けて体を動かそうとする時、皮膚表面には生体電位と呼ぶ微弱な電気信号が現れます。これをHALの各関節のセンサーがとらえて解析し、筋肉を動かすのです」(山海さん)

HAL それだけではない。

 「筋肉が動くことによって今度は、そのサインが感覚神経を伝って脳にフィードバックします。つまり、HALが動くと筋肉が動かされ、筋肉が動くとHALもそれに連動して動く。ですから運動機能が低下した高齢者や障害者も滑らかで自然な動きができる。一方、健常者が装着すれば、重いものを持ち上げたり運ぶことができるというわけです」

 HALはサイバニクス(人・機械・情報系の融合)を具現化した世界初のマシンであり、人の意志と機械・情報をつなぐロボットなのだ。

■人間の“友人”になる
 HALは総重量23キロ。下半身だけのタイプでも15キロだが、腕や脚だけ、あるいは指だけのユニット装着も可能で、その部位のリハビリにも役立つ。

 「ポリオで脚が動かない人に装着したら、『45年ぶりに動いた!』と喜ばれました。さらに小型軽量化し、子供用も作りたい」と山海さんは目を輝かす。

 そうした医療や介護、自立動作支援の現場向けに、同社はHALを量産し、大和ハウス工業と共同で今年10月からHALのリースを開始する。

HAL また、つくば市内にはHALの体感拠点「サイバーダインスタジオ」も建設中。デンマーク政府がHAL研究に予算を組んでおり、海外に進出のプランもある。

 HALの夢―それは人間との共存だ。だから山海さんはHALの軍事利用にはいっさい応じない。複数の特許も筑波大に移し、技術流出をストップした。HALはあくまで“人間の友人”であるという強い信念に基づくものだ。

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 【HAL博物館】
 山海さんらはHALに人間の運動機能の“コツ”を伝授しようとしている。たとえば、イチローや松井秀喜、ゴルフの石川遼選手のバッティングやスイングの動きをHALに記憶させ、それらをズラリと並べた博物館を建設すれば、来場者は装着するだけで一流プレーヤーの動きを追体験できる。

 斬新なトレーニング法となるとともに、一流選手の動きを後世に残す貴重なデータとなることは間違いない。

 【遠隔療養への応用】
 医療現場で専門家がHALを動かし、そのデータをネットを通じて家庭のHALに送信し、同じ動きをさせる。これにより、わざわざ施設に行かなくても効果的な運動療法ができる。また、HALを装着直後の人の脳は活発に働くことが明らかになっている。そこで、脳に刺激を与えるタイプのHALを作れば、「ニューロリハビリ」と呼ばれる次世代タイプの脳リハビリの可能性も開ける。

 【グッドデザイン賞】
HAL HALは世界テクノロジー大賞など数々の賞を受賞している。中でもユニークなのは2006年度のグッドデザイン賞で金賞を受賞したこと。背中の滑らかなラインが受賞のポイントという。

 「やはり男は、背中で”魅せて”なんぼの世界です。人が身につけるものだから、デザインにも凝りました」と山海教授も自慢げ。白はデモンストレーション用。白のほかメタリックワインレッド、メタリックブルー、ガンメタがある。これに黄色とピンクがそろえば、『HALレンジャー』誕生だが…。

(写真は筑波大学・サイバーダイン社提供)

投稿日: 2008年06月14日

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