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清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」(12)ライフネット生命(下)シンプルで分かりやすい商品
ネット専業生保として先月18日にスタートしたばかりのライフネット生命。社長の出口治明によれば、「2001年に、これから日本で生命保険事業をやるならネット生命だと友人と話ししていた。その時点で、『E―ライフ』と仮の会社名まで考えたほどだ」という。
出口が真剣にこのアイデアの具体化を目指していたことは、その後、ある外資系企業からスカウトの声がかかったときに、「今後、日本で生保事業をやるなら、免許だけを残して既存の販売網、契約などをすべて他社に譲渡し、ネット生保で出直すしかない」と提言していることでもわかる。ネットを使って、分かりやすい生保商品を正直に売ることのみが、高齢化社会を迎え、市場が飽和状態にある日本で新規参入組が生きて行く道だと出口は真実考えていたのだ。
しかし結局、出口の企画はその時点では現実化せず、前回リポートしたように06年10月のライフネット生命設立まで待たなければならなかった。
「E―ライフ」がなぜ「ライフネット生命」と変わったかというと、「インターネット+生命保険+人生を支える『セーフティネット』」というこの会社のコンセプトを、「ライフネット生命」がもっとも端的に表現していると考えたからだという。コピーライター小野田隆雄の提案である。
さて、そのライフネット生命だが、最大の特徴は何から何まで実にシンプルにできていることだと言っていい。まず保険商品が基本的には2種類しかない。「かぞくへの保険」と名付けられた「死亡保険(定期)」と、「じぶんへの保険」と名付けられた「医療保険(終身)」だけ。
現状、「かぞくへの保険」の場合、一切の特約や解約返戻金、配当などはない。これによりメーンターゲットである20代から40代前半の働き盛り世代の保険料が安く抑えられ、また保障期間を10年・20年と絞ったことでも終身型と比べ保険料を安くすることができるのだという。
「じぶんへの保険」は保険料が割安な若いうちに加入し、病気や怪我が怖い年をとってからも生涯にわたり保障がつづく設計になっている。入院給付金は「5000円、1万円、1万5000円」の3種類のみ、手術給付金も実情に即して1泊以上の入院手術に対し一律10万円となっている。
いずれにしろライフネットの保険料は既存生保に比べ、相当に安い。商品設計がシンプルで、安く、分かりやすいのは、あくまでも加入者がネットで検索し、自分で良し悪し、適不適を判断するネット販売が基本であること、つまり売り方がシンプルなことと密接に関連している。複雑な商品では、保険のおばさんが対面で売ってさえクレームが頻出するのだから、ネット販売ではたいへんなことになるというわけだ。
申し込みもシンプル。インターネットで週7日、24時間可能である。若い働き盛りの年代に、安価でかつ既存生保の補償に負けない商品をということになると、管理コストも当然かけられない。
「契約や支払いの査定などに関しては他社と変わらないが、その他のコスト、人員はほぼ半分くらいではないか」と出口は語る。
組織・人員もまたシンプルにできているのだ。外部への発信も、役職員全員が友人知人にメールをせっせと打つとか、できるだけ人に会うとか、小技をきかせている。とはいえ「ウエブとコンタクトセンター(コールセンター)が当社の2つしかない店。これを大事にしないと」ということで、本社内に設置しているコンタクトセンターにはそれなりにコストをかけている。開業日当日、一番にかかってきた電話には出口自身が応対した。
「保険はつくられたときから、加入者全員のもの、そしてシンプルなものだった。近代生命保険の始まりであるエクィタブル生命の人が今の日本の生保業界を見たら、ライフネット生命だけが生保だと言うだろう」と語る出口。ライフネットは保険の原点に立ち返って生まれた会社だという自負が、そこからはうかがわれる。
今後については、「ともかく50人の社員が力を合わせて、生保のあるべき姿を愚直にやりとおすだけ。いま若い世代で、ネットで商品、サービスを買わない人はいない。とすればネット生保もそれなりにマーケットシェアをとれるはず。長期的には充分勝算がある」と自信を見せる。次を狙ってか、60歳の生保ベンチャーに業界関係者が注ぐ視線は熱い。
(経済ジャーナリスト)
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でぐち・はるあき
日生時代から業界の理論家として知られていた。生命保険協会財務企画専門委員会の初代委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に敏腕をふるったことも。が、その出口には別の顔がある。
ライフネット生命設立の前年、東京大学の小宮山宏総長から「社会に東大が入り込む手伝いをしてほしい」と頼まれ、子会社に移っていたことから総長室アドバイザーを引き受ける。東大博物館の大学外での初の陳列となるモバイルミュージアムの開設や、世界の有力大学学長との5カ年連続シンポジウム企画など斬新なアイデアをつぎつぎと実現させた。アイデアマンであり、行動派でもある。
「ライフネット生命の話がなければ、いまもボランティアで小宮山さんを手伝っていたでしょうね」と語る。ただし自身は京大卒。三重県の秘境で知られる美杉村出身。
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