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数独の父・鍜治真起(かじまき)の「競輪百景」 第8景「開門15分後のギャンブル場は・・・」
開門15分後のギャンブル場が好きだ。
第1レースが始まるまで40分以上ある。
自動券売機も動いていない。
ほんの一握りのギャンブラーが、条件反射でいつもと同じ席(場所)に腰を下ろしている。
1人客が散らばっている。
声がない。
何をするでもない、時間が止まっているような、この光景はフレームを付けなくても「絵」になっている。
みなさん、まるで自分の家でくつろいでいるような、無防備で落ちついた顔をしている。
それでいて自分の家ではない空間。
鉄火場なのに、このいとおしい空気、瞬間は何なのだろう。
そこに「儲けたい」という金銭欲が一切見えないのは何なのだろう。
好きだ。
ベルが鳴り、穴場が開き、前日(?)の払い戻しをするおっちゃんが動くところから、一日の場内の猥雑なすれ違いのスタートだ。
「白2本、黒2本とビール」と、モツの串を注文するおやじさんは元気がいい。
「ああ毎度ね、今日も勝ってね、これを食べてさ」と、愛想のいい70歳くらいのおばあちゃん。
「余計なこと言うな、はやく釣りよこせ」
「わたしゃ、計算できなくなっちゃったんだよ」
「できなきゃ、やめちゃえよ」
「やめたら死んじゃうよ」
「今日くたばるな、明日にしろ」
泣ける。
最高級のツッコミとボケ。
天国一歩手前の突き抜けた明るさ。
こんなレベルの会話、競輪場でしか聞いたことがない。
レースが終わり、非日常から日常に戻っていくための儀式は人それぞれ。
開門15分後の空気は、日常から非日常に入れた大きな喜びが蔓延しているのだろうか。 ((株)ニコリ”非常勤”社長)


