この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
「かねやんぐうたら読書」瀬戸内寂聴著『奇縁まんだら』
瀬戸内さんが、まだ得度前の晴美時代、私はインタビューに行って追い返されたことがある。作品とともに瀬戸内さんその人を紹介する企画だった。著書の何冊かは読んで準備したが、全部は読みきれない。
インタビューに入ると、氏は私が読んでいない本の話題を振ってくる。正直に読んでいないと言わず、曖昧にごまかしていたのがまずかった。突然席を立った瀬戸内さんは、数冊の本を抱えて戻ってくると、「これを読んでから来てください」と差し出した。
これも晴美氏の時代、年末用にお願いした随筆を貰いに行ったら、新年用にならないかと言われた。新年の新聞紙面には大作家が登場するのが通例である。流行作家ではあったが、大作家とは言えない当時の氏にそうも言えず、応答に困ったことを覚えている。何事にも率直な方なのである。
島崎藤村から水上勉まで21人の物故作家との“縁”をつづったこの本でもその率直さが興味深い。たとえば出家のさいの法師となった今東光とのやり取り。
「頭はどうする?」
「剃ります」
「下半身はどうする?」
「断ちます」
当時、瀬戸内さんが、2人の男性作家との関係に悩んでいたことを思うと、この答えにはリアリティーがある。
彼女以上に率直なのが宇野千代。瀬戸内さんが宇野さんと交渉のあった男性作家の名を上げて、文学的影響などを聞こうとして名前をあげると、間髪を入れず「寝た」「寝ない」という答えが返ってくる。「寝た」と答える数の方がずっと多かったという。 (金田浩一呂)


