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清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」(16)環境・省エネに挑む(2)ゼファー
日本の風力発電能力は極めて脆弱である。2007年末時点での世界の国別風力発電導入量(総設備容量)を見れば、それはよく分かる。トップがドイツ(シェア23・6%)、ついでアメリカ(17・9%)、スペイン(16・1%)、インド(8・5%)、中国(6・4%)などと続き、日本はベストテンにさえ顔を出さない。
すでに太陽光発電でもドイツに追い抜かれ、自然エネルギー利用分野における日本の立ち遅れは目を覆わんばかりだ。ドイツなどと違い、電力大手の意向が購入枠、価格など政策面に強く反映しすぎているためである。
そうした状況下で風力発電分野において孤軍奮闘しているのが、従業員わずか二十数人ながら、この分野のパイオニアとされる小企業ゼファーである。
会社設立6年目の02年、創業者の伊藤瞭介は〈日本の市場をこじ開けようとしても時間がかかる。大型風力発電で海外勢をキャッチアップするのも同様。とすれば日本が得意とする小型・軽量化技術、量産化技術を生かし、狭い場所でも、風がさほど強くない場所でも、効率よく風車が回り発電できる風力発電機をつくれば、世界の市場に売り込むことが出来るにちがいない〉と考えた。
しかし、ゼファーにはそれをすべてクリアできるだけの技術力も人材もいない。伊藤はそれまでの失敗を含めたあらゆる経験を注ぎ込み、世界市場を視野に入れた小型風力発電機の商品企画書とそのための「開発シナリオ」を作成し、これはと思う有識者、機関、企業に自ら当たっていった。
強い関心を示してくれた一人が当時、独立行政法人産業技術総合研究所の松宮煇(ひかる)博士だった。その後、松宮は成城学園の同窓であることが分かるのだが、いずれにしろ松宮との出会いを契機に「プロジェクトZ」という名の産官学を巻き込んだ研究開発チームが生まれることになる。多くが個人的レベルでの協力であった。
チームでは、例えば東レは軽くて丈夫な翼の成型に貢献し、モリ山技研は、伊藤が箱根の木工技術「組子細工」のことを話すと、それを参考にねじを使わないボディー構造を開発、自然状態がいかに過酷でも壊れることのない頑丈なボディー部分を作り出した。このうち軽量化については次のような数字を見ればよく分かるだろう。
日本でも海岸などに設置されている大型風力発電機は1ワット発電するのに150グラムの重量を要する。これに対しゼファーの発電機は1ワットに対して17グラムほどですむ。9分の1ほどの重量なのだ。当然、原材料費、製造コスト、据付費用、運転コストすべてにおいて低コスト化が可能になる。
05年、「プロジェクトZ」によって開発された新機種は「エアードルフィン マーク―ゼロ」と名付けられ、世に送り出された。この小型風力発電機には、前述の以外にもいくつもの先進技術が搭載されている。1つは「パワー・アシスト方式」というもので、これにより通常の風力発電機よりはるかに早く回転運動に入ることが可能になった。フクロウの羽の構造をヒントにした「サイレント・ディスラプター・ブレード」は、住宅地でも取り付け可能な低騒音を実現した。また、従来の風力発電機は暴風に遭遇すると過回転などで故障する確率が高かったのだが、この新鋭機は風速が毎秒20メートルから50メートルの間でも、ローターの回転数を落としながら高効率で発電できる。しかも、大型だと年に1カ月前後止めて補修する必要があるが、この小型機はメンテナンスフリー。この点でもコストが相当にちがう。
伊藤はエアードルフィンの開発に目処がついたところから、ベンチャーキャピタルの資本を入れ、新エネルギー・産業技術開発機構の補助金を加えると、ほぼ6億円が新機種開発に投入された。
こうしてエアードルフィンは昨年、本格発売され、1500台強売れた。8割が国内で残りは輸出。しかし、国内では電力購入料金が火力発電と同等に低く抑えられているなどのため普及に限界があると考えられることから、輸出に注力中である。今期は輸出が6割、3年後には7割を輸出に向けたい考えである。またその時点で月産1000台ベースとし、売上も今期見通し7億5000万円を3~4倍にまで拡大したい。すでに今期は塁損を消して黒字化の見通しだと、伊藤は語る。
山水電気で一度は挫折した、子どものときからの生きがい「ものづくり」。今、風力発電という異なるフィールドだが、伊藤はその夢を再び大きく膨らませつつある。 =敬称略
(経済ジャーナリスト)
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風力発電の国内普及
日本政府の自然エネルギーに対する姿勢は、欧州ことにドイツなどと比較すると恐ろしく消極的だ。ドイツでは2010年までに全発電量の12%を自然エネルギーでまかなうとしているのに対し、日本が同時期に電力各社に買い取りを義務化しているのは 1 .35%のみ。
しかも風力については、02年に電力各社が33万キロワットの枠を定めて入札・抽選したところ、 204万キロワットの応募があった。10年には 300万キロワットの設備が見込まれているから、それらの6分の5が初めから不要と言われているようなものである。
自然エネルギーの拡大などこれでは不可能だ。ドイツでは自然エネルギー普及の拡大で、二酸化炭素排出量が大幅に削減されつつあるだけでなく、1兆円規模の経済効果と13万人の雇用を生み出していると伝えられている。「自然エネルギーはコストだけの問題ではない」と伊藤は言うが、市場の伸びの差は歴然。ゼファーが海外志向を強めるのも無理からぬところだ。
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