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瀬名秀明「イヴのみる夢」(44)iPS細胞を安全、簡単に
2007年11月、京都大学の山中伸弥教授らがヒトのiPS細胞をつくり大きな話題を呼んだ。iPSとは人工多能性幹細胞。胚細胞からではなくふつうの細胞を人工的にリセットすることで、さまざまな細胞に分化する幹細胞がつくれるようになったのである。
山中教授はES細胞の状態に着目した。ES細胞の中で働いている遺伝子をふつうの細胞で活性化させれば、ふつうの細胞もES細胞のようになるのではないか? 山中教授は公開データベースから候補を絞り込み、4つの遺伝子を導入して人工的にES細胞と同様のiPS細胞をつくった。いま世界中の科学者が、このiPS細胞を少しでも安全に、簡単につくれるよう、急ピッチで手法の改良を進めている。最近もハーバード大学が作製効率を一気に100倍に上げたと発表した。
iPS細胞の研究は始まったばかりなので、これまでのES細胞の研究成果と比較検討して、安全性や特徴を詳しく調べなくてはいけない。ES細胞は役目を終えるわけではなく、むしろ今後は目的に応じてiPS細胞とES細胞を使い分けるようになるはずだ。
スーパーマンを演じたクリストファー・リーヴは落馬で脊髄を損傷し、車椅子生活を送った。彼は再生医療に希望を託し、基金を設立して研究を支援したが、2004年に他界した。いまなら彼を救えるだろうか。
iPS細胞から神経幹細胞をつくって移植するには2カ月以上かかる。その間に傷口にはカサブタができて移植が邪魔されてしまう。そこで山中教授らが提唱しているのはiPS細胞や神経幹細胞のバンクの設立だ。輸血のようにたくさんの細胞からあらかじめ移植できる幹細胞をつくっておいて、そこから自分の体のタイプにマッチする細胞をすばやく選別して移植するのである。しかし移植には免疫拒絶反応がつきもので、完全に抑えるにはやはり自分の細胞を移植するしかない。
2038年の未来にNさんの弟が移植される空想上のMAC細胞は実現するだろうか?
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(43)再生医療の未来をひらく(3)
(42)再生医療の未来をひらく(2)
(41)再生医療の未来をひらく(1)
(40)応用範囲広し"テラヘルツ波"
(39)脳の"可塑性低下"うつ病の原因
(38)「医工学」が生んだ人工網膜
(37)未来技術の"予言"を一般公募
(36)感情スイッチで皮膚に紋様
(35)蛇のように膜でドライアイ防止
(34)未来の福祉ロボットのヒント
(33)他者の痛みが分かる「感情移入」能力
(32)セクシー美女が大バクチを呼ぶ
(31)骨伝導で語学学習や音楽を堪能
(30)体格と性格の相関をメタボ対策に応用
(29)お菓子感覚でキッズサプリ
(28)ご飯のお供にワクチンふりかけ
(27)歩くだけで5ワット! 人体発電機
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
