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清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」(17)環境・省エネに挑む(3)東邦レオ
昨夏、各地で過去の最高気温を更新し、地球温暖化をまざまざと実感したが、今夏はさらに暑い夏を体験することになるのではないか。この1週間のただならぬ暑さはその予兆を確信させるに十分だろう。なかでもヒートアイランド現象と呼ばれる、エアコンや自動車の排熱、ビルや舗装道路の照り返し熱による都市部の高温化の解決は焦眉の急である。逆にそこに大きなビジネスチャンスを見つけ、成長のバネにしようという企業もまた続々と登場してきている。
屋上緑化・壁面緑化の有力企業、東邦レオ(本社大阪市)もそうした時代のニーズを成長の糧にしようとしている企業の1つだ。「しあわせ環境クリエイター」を標榜するだけあって、東京・大塚駅前にある東京支店(技術研究所を併設)を訪ねると、正面玄関脇には緑豊かな植栽がほどこされ、屋上へ上ると狭いながらも小庭園が造られていて、真夏の直射日光が照りつける日中なのに、そこはかとない和みと涼味とが感じられる。
屋上緑化、壁面緑化というといかにも最新の技術テーマのように聞こえるが、ペギー葉山の往年のヒット曲「学生時代」の歌詞中にある「蔦の絡まるチャペル」なども、ある意味でその先駆的形態であり、言葉はともかく概念としては古くからあったものだと言っていい。もっとも、温暖化やヒートアイランド対策の必要性が声高に叫ばれるまで、さほど注目されることはなかった。近代的なビルを自然物である緑で覆うなど企業としての先進的イメージを損なうし、設備やメンテナンス費用などもひどく高くつくため、とんでもないと敬遠するオーナーや経営者が多かったからである。
しかし、今や時代は大きく変わりつつある。
東邦レオの橘俊夫社長によれば、「例えば貸しビルのオーナーに話を伺うと、屋上を緑化する予定ですと話すとそれなら入居しましょうとか、それならばと家賃のアップを飲んでくれるテナントも増えてきているそうです。屋上緑化をしたからといって、最上階を除けば冷暖房費が大きく下がるわけではなく、直接的メリットはそれほどないのですが、そうしたビルに入っていることが企業のイメージアップにつながり、求人にも有効のようです」という。
行政もまた変わってきている。東京都は2001年4月から新増築の構造物には屋上緑化などを条例で義務付けており、例えば民間の場合、1000平方メートル以上の敷地で新増築を行う場合は、屋上面積の2割以上を緑化しなければならないとしている。
もちろん一方で、施工面積拡大のための支援策も用意している。大阪府や兵庫県なども追随、つれて緑化面積も急増している。国土交通省の「全国屋上・壁面緑化施工面積調査」(07年6月)によると、00年から06年までの7年間で屋上緑化は累計で160㌶に達し、調査開始時点に比べ12倍近くまで広がっている。ただし壁面緑化の方は、橘によると「これまでは単位面積当たりの施工コストがかなり高かった」こともあり、同時期に10㌶、4倍弱の伸びにとどまっている。この壁面はもちろん、屋上緑化にしても政府が京都議定書で目指している合計310㌶には不十分で、まだまだこれからである。
東邦レオがなぜ、この屋上緑化・壁面緑化事業に乗り出すことになったのか。それにはいささか長い前史がある。同社は現社長の父、泰治が1965年に大阪で設立した共栄パーライト販売という会社が前身。黒曜石を焼いて作るパーライトは軽くて断熱・吸音効果などのある建築資材である。同社は独占的供給業者として業績を順調に伸ばし、6年後に東邦パーライトと社名変更するが、まもなくオイルショックに遭遇。公共事業の縮小に加え、公共工事における材料納入の1社指定が禁止されたために、新分野進出が不可欠となった。
若手社員の提案で、新たに手を染めたのがやはりパーライトを用いた土壌改良材事業。官公庁の公園や河川関係部署を中心に売り込み、この分野でも同社の名は知れ渡る。「日本の土壌は複雑で、地場の造園屋さんは勘と経験で仕事をしていた。ところがうちは全国展開しており、全国の土壌の知識が社内に蓄積されたため、土壌改良のことはうちに聞けという定評がいつの間にか出来上がったんです」と橘。
93年に現社名に変更した同社は、土壌改良と深くかかわったことから、新事業として屋上・壁面緑化を含む緑化事業に進出することになる。これもまた、社員の提案によるものである。
=敬称略
(経済ジャーナリスト)
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屋上・壁面緑化のメリット
東京都環境局の資料によると、屋上・壁面の緑化にはまず「ヒートアイランド現象を緩和する」効果があると指摘する。というのも95年の都環境科学研究所のシミュレーション結果から推定した夏場の最高気温は、緑の喪失により 1・4度程度、都市活動にともなう排熱により 04度程度上昇している。とすれば屋上緑化は対策として極めて有効と考えられるからである。
屋上や壁面の緑化はそれだけでなく、ビル外壁の断熱材と同様な働きをすることからビル空調などの省エネ、ビルの長寿命化にも役立つ。また地上部分における緑化は限界に来ているが、屋上などの緑化によりNOx削減、酸素供給量の拡大が期待できる。加えて都市景観の向上や、人々の生活面での潤い、自然性の回復などさまざまなメリットをもたらす。
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