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フライトシュミレーターで機長な空の旅

 一生に一度でいいから飛行機を操縦してみたい。…と思っても小型機でさえ免許取得にはざっと500万円かかるというから、まあ手が出ない。その代わりに夢をかなえてくれるのが仮想世界を飛ぶフライトシミュレーターだ。最近は、実機そのままの計器類や、飛行風景を忠実に再現したホンモノさながらの一般人向けシミュレーターが開発され、国際線パイロットの卵たちまでもが、こっそり訓練に訪れているとか。プロも認めるリアルな空の旅を体験してみた。この夏の思い出作りに、あなたもいかがですか?

 東京のJR錦糸町駅から歩いて15分。蔵前橋通りから1本入った路地に航空用品を取り扱う「エフエス・シーマ」がある。外観は小さな事務所風だが、中をのぞいてみると…、20平方メートルほどの店内に2台のフライトシミュレーターが置かれていた。

 今回、操縦を教えてくれたのはシミュレーター・アドバイザーの大石和太郎さん。御年なんと75歳。趣味として実機での飛行経験も豊富で、かつては電車の運転士だったそうだ。

 2台のシミュレーターはいずれもプロペラ機で、ひとつが双発機、もうひとつが単発機。体験操縦費用は40分で2000円。せっかくなので速度が出る双発機の方に乗ることにした。

 「副操縦士」大石さんの左に記者は「機長」として座る。重厚なドアを閉め、シートベルトを締めると、仮想世界といえどもちょっと緊張。エンジンのスイッチを入れると尻にブルブルッと振動が伝わってきた。へえー、リアルですね。
 さっそく離陸。走り始めると、あれっ? なぜか左へ左へと進んでしまう。ど、どうしたんだ?

 「プロペラの関係で離陸時には左へ流れてしまうのです。これをいかにこらえるかが離陸のポイントです」

 なるほど、などと納得しているとますます左に流されたので、すべて大石さんに任せることにした。最初から、お客さん気分だ。

 無事に離陸できた。飛び立ったのは羽田空港という設定で、東京上空を目指す。

 「たとえば、皇居の上は飛行禁止区域なのですが、シミュレーターなら飛行可能です。世界中の空港、都市をプログラムしていますから、ニューヨークでもパリでも好きな場所を飛べますし、気象条件や時間も自由に設定できます」

 自由に条件を決められる点が、パイロットの卵や自衛隊関係者らプロにも重宝される理由らしい。

 ところで、このシミュレーターは「エフエス・シーマ」の津山善三会長(70)が開発した。1台あたりの製作費は1500万円ほど。航空機器関連の会社を定年退職した後、「より多くの人に本格的な操縦を体験してほしい」と製作したという。

 「本物を操縦するには免許が必要ですし、実際に飛ばすと1時間あたり4―5万円はかかります。シミュレーターは重力こそかかりませんが、他はほとんど同じ環境なので、さほどお金をかけずに飛行を楽しめます」(津山さん)

 加えて、こんな狙いもある。
 「あらかじめシミュレーターで訓練しておけば、免許がより短期間で取得でき、お金の節約にもなります。また、長い間、操縦から遠ざかっているペーパーライセンサーがこれで技量を維持しておけば再び空へ安全に戻れます」

 津山さんは操縦席の後ろから説明してくれる。2人乗りのコックピットなのに3人で会話できるのもシミュレーターならではか。

 お台場上空にさしかかった。フジテレビの本社がなかなか忠実に再現されている。と、大石さんが「こんなこともできますよ」と高度を川の水面近くまで下げ、目の前のレインボーブリッジの下をくぐり抜けてしまった。「本物の飛行機では絶対にできない芸当ですけれどね」。

 大石さんにはこんな夢があるそうだ。

 「シミュレーターの中だけで飛行を楽しむサークルを作りたいんです。実機だと経済的な負担が大きいですし、高齢になるとさらに挑戦しづらい。しかしシミュレーターなら年齢は関係ない。私も75歳。『一生に一度は飛行機を操縦してみたい』という夢は、多くの人が持っているのではないでしょうか」

 話をうかがううちに、わが“飛行機”は30分の遊覧飛行を終え、羽田空港へと無事着陸した。「着陸が一番面白いですよ」と大石さん。操縦桿やスイッチを複雑に動かす必要はあるが、慣れれば楽しそうだ。
  ×  ×  ×
 エフエス・シーマ(東京都墨田区石原3の24の9、電話03・3625・3841) フライトシミュレーターのほかレア物の航空関連グッズも販売している。営業時間は午前10時30分―午後7時。午後7時以降のシミュレーター体験は要予約。

 【航空科学博物館】
 こちらのDC―8シミュレーターは、日本航空でパイロット訓練に使われていたものを一般人の体験用に改修。東京湾岸と成田空港周辺の飛行ルートを体験できる。
 入館料は大人500円、中高生300円、子供(4歳以上)200円で、所要時間は20分。利用には受付で配布している整理券が必要。
 電車ではJRと京成の成田空港駅から路線バスで約15分。車では東関道・成田インターから約20分。

 【石川県立航空プラザ】
 戦後初の国産プロペラ型旅客輸送機「YS―11A型機」のシミュレーターがある。1970年に製造され、その後約30年間、全日空でパイロットや整備士などの訓練で実際に使われてきた。
 シミュレーターは幅約3・5メートル、奥行き約4メートル、高さ約4・5メートル。利用料は1回500円で、所要時間約10分。プラザへの入館は無料。
 小松空港(同県小松市)から徒歩5分。電車の場合はJR小松駅からバスで小松空港へ向かい、歩いていくのが便利。

投稿日: 2008年08月14日

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