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洞口依子「おつかれさま」好きな人が手にした線香花火
■洞口依子、おつかれさま
君が手にした
線香花火
小さな火玉から
広がる宇宙世界
夏の風物詩といえば、花火。浴衣を着て花火大会に出かけるのも風流でありますが、人混み嫌いな私は花火大会が苦手。なので、夏は線香花火を独りこっそりやります。
この線香花火。子供の頃から実は一番好きな花火で、あの火花の中に秘められた小さな宇宙に引き込まれてしまいます。
構造もいたってシンプル。和紙を紙縒(こより)、硝石(しょうせき)と硫黄と松煙で器用に作られたモノ。火薬の配合もあるようですが、線香花火はいかに紙縒を絞れるかにかかっていて、昔から紙縒は手先の器用な日本人の得意とする技でしたが最近紙縒ができる人など見かけませんよね。
ほどよく固く絞って作ることで線香花火のあの独特な火花の宇宙が作られるそうです。線香花火を持つ時、静かな緊張が体を走り、指先に火玉が丸く光りやがてゆっくり火花を放ち出し小さな宇宙が掌の中にできると、私などはうっとり見入ってしまう。
花火大会のどかんと大輪の火花の散るあの世界も大きな惑星を眺めるようで美しいけれど、都会の暗闇の片隅でしっぽり線香花火の宇宙に酔いしれてみるのもいいかも。そして独りよりもできれば好きな人と二人がいい。
線香花火を持つ彼女の指先から小さな宇宙が見える瞬間、彼女の顔が愛おしく感じない男はいないはず。付け加えるなら線香花火は好きな人が手にしたものを眺めるのが美しい。好きな人の掌の中で広がる数秒間の宇宙。
言葉はいらない。
そこには線香花火と最良の微笑みさえあればなにもいらない。
そんな夏の夜のひと時。
過ごせるといいですね。
