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清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」(19)環境・省エネに挑む(5)東京ガス「エネファーム」

企業戦略ウォーズ 「エネファーム」という言葉をお聞きになったことがあるだろうか。「エネルギー」と「ファーム=農場」の合成語で、意味はエネルギーをつくる農場ということになる。自然や環境とエネルギーとを結び付けようという意図は理解できるが、しかしこれだけでは模糊としていて分かりづらい。実はこの言葉、今年6月から家庭用燃料電池コージェネレーションシステムに関する業界共通のネーミングとして採用されたものなのである。

 家庭用燃料電池というのは、風力や太陽光発電などとともに次世代エネルギーの1つとして注目されている技術で、風力や太陽光が自然エネルギーを活用するのに対し、多くの場合、化石燃料を使う点で大いに違う。それでも次世代と言われるのは、分散型でエネルギー効率が集中型の大型発電などに比べ高い、あるいは高くできる可能性があり、目指すべき低酸素社会に適したシステムだと考えられているからである。

企業戦略ウォーズ 6月30日、北海道洞爺湖サミット開会を前に、洞爺湖町の北隣、留寿都村の国際メディアセンターに隣接してゼロエミッションハウスが建てられ、その別棟に東京ガスの鳥原光憲社長や、燃料電池実用化推進協議会の西室泰三会長ら関係する政財界人が集まり、腕まくりならぬ足まくりしてヒノキ材でできた足湯に浸かるという一幕があった。

 技術面で日本が世界に先行しているとされる家庭用燃料電池を、この場で国内外にアピールすることを狙ったのである。足湯はその後、取材記者団に解放され、少なくともサミット期間中、外国人記者たちにも利用され好評だったという。

 それにしても燃料電池と足湯とどういう関係があるのか。新日本石油などと協力してシステムを設置した東京ガスリビングエネルギー本部リビング技術サポート部の山本建司部長は、家庭用燃料電池のシステムを説明しつつ、こう語る。山本は社内で初期から、燃料電池開発に携わってきたその道の専門家である。

 「家庭用燃料電池は、家庭でガスから水素を分離してそれを空中の酸素と反応させて発電するシステム。ガスから水素を取り出すには燃料改質技術というのを用いて行うのだが、東ガスは独自技術として早くからこれを確立していた。燃料電池は家庭内で取り出した水素を酸素と化学反応させて発電するわけだから、送電時のロスはないし、発生した反応熱で水を温め有効利用するのだから、熱も無駄にならない。ゼロエミッションハウスの足湯のお湯はこの反応熱を利用したものです。またこのように電気と熱の両方を利用できる点で、家庭用燃料電池は、現状はともかく将来は極めて高効率なものになる可能性があります」

 可能性があるというのは、現状ではまだ家庭用の小型の燃料電池は発電効率が30~37%にすぎず、同じ燃料電池でも工場や巨大再開発ビルなどで用いられる大型コージェネシステムに比べても10ポイント前後低く、最新鋭の火力発電に比べると20%以上低いという現実があるからである。

 「現在、電解質にセラミックスを用いた固体酸化物型(SOFC)と呼ばれる新型電池が開発されており、これだと発電効率が40~50%に達する。予定より5年ほど遅れていますが、あと数年で開発できるはずです」と山本。

 なぜ、これほど東京ガスが家庭用燃料電池事業に注力しているのか。これについては、ふたつの側面から説明すべきだろう。1つはガス業界と電力業界との競合激化である。東ガスの場合、東京電力と家庭用エネルギー市場でもろにバッティングする。「オール電化住宅」などというのが電力側の最大のキーワードである。これに対して東京ガスは06年度を初年度とする中期経営計画において、「家庭用市場が鈍化」し始めたとし、「天然ガス市場の創造と開拓」が急務であると記す。そこで過半を占める家庭用市場を「マイホーム発電」で獲得していかなければならないとする。マイホーム発電の大きな柱が家庭用燃料電池事業であることは言を待たない。大げさに言えば、家庭用燃料電池はこれからの東京ガスの成長を左右する重要分野なのである。

 もう1つは、地球温暖化にかかわっての問題である。1990年度から2006年度までの間に、国内の家庭部門のCO2は30・0%も増えている。産業部門が4・6%減ったのと対照的である。この家庭部門の用途別エネルギー消費を見ると、給湯は動力・照明ほかについで30%を占める。ということは、家庭からのCO2排出を減らすには、給湯に用いられるエネルギーをいかに削減するかが最重要事の1つだと言っていい。

 つまるところ、東京ガスは企業ベースの要請と国家ベースでの要請のふたつの面から、家庭燃料電池システムの開発・普及に、目下、全力で取り組んでいるのである。それはまた、ともに企業成長に欠かせない道でもあるのだ。  =敬称略
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 東京ガス
 1885(明治18)年創業の、わが国最大のガス会社。東京を中心に首都圏、関東一円、山梨県の主要都市をマーケットとする。資本金1418億4400万円。売上高1兆2680億4800万円(ともに08年3月期)。
 ガスの製造・供給・販売、関連機器の販売などが主要業務だったが、規制緩和の進展にともない電気や熱供給事業などにも進出。つれて電力最大手、東京電力との軋轢が増している。06年4月の就任挨拶で、鳥原社長はあえてこの点に触れ、「あらゆる企業努力を傾注して常に競争力を高め、(東京電力と)好敵手の関係を維持していく云々」と述べている。家庭用燃料電池はそのための大きな武器だと言っていいだろう。


清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(1)USJ(上)
清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(2)USJ(中)
清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(3)USJ(下)
清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」(4)ミサワインターナショナル(上)
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投稿日: 2008年08月18日

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