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瀬名秀明「イヴのみる夢」(45)iPS細胞使い遺伝子に合う薬選択
さまざまな医療応用が期待されるiPS細胞だが、さっそく本年度中にも国内で開始されそうなのが、患者の細胞を取り出して病気の臓器を人工的につくり出す研究だ。
パーキンソン病や筋ジストロフィー、Ⅰ型糖尿病などは、原因となる遺伝子の変異が患者ひとりひとりで微妙に違う。同じスーツを買うときでも自分の体型に合ったものを選ぶように、今後は自分の遺伝子にいちばん合った薬を選ぶ時代がやってくる。
いきなり自分の体で試験するのは倫理上問題があるが、自分の皮膚細胞を採ってきてiPS細胞の技術で病気の臓器へと分化させ、その細胞を詳しく分析すれば、その人に合った治療法の解明や新薬開発にもつながるだろう。
iPS細胞の応用は、医療工学の最先端ともリンクする。いま研究者が苦労しているのは、フラスコの中で3次元状態のまま細胞を培養する技術が少ないことだ。iPS細胞を分化させてそのまま心臓や肝臓などの臓器ができあがればうれしいのだが、いまはシャーレの底で2次元的に細胞を増やすのが精一杯。そこで細胞をシート状に培養してシールを貼るように心臓や角膜に移植する方法が検討されている。何層にも重ねれば3次元になる。
すでに研究が進んでいるES細胞は、シンガポールなどで臨床応用が始まろうとしている。国によって倫理的規制は大きく異なっているので、今後は治療を受けたい患者が国を選んで渡航する時代が来るかもしれない。
iPS細胞の研究によって、細胞の人生をリセットする方法は発見された。しかし研究が終わったわけではない。山中伸弥教授と同時期にヒトiPS細胞を作成したウィスコンシン大学のジェームズ・トムスン教授は、10年前に世界で初めてヒトES細胞をつくった、この分野の第一人者だ。教授は「これからの10年にも、予想もつかない進展があるはず」と断言する。皮膚の細胞からiPS細胞を経由せず、直接膵臓(すいぞう)や神経細胞をつくる夢の技術を目指して、研究はなおも続いてゆく。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(44)iPS細胞を安全、簡単に
(43)再生医療の未来をひらく(3)
(42)再生医療の未来をひらく(2)
(41)再生医療の未来をひらく(1)
(40)応用範囲広し"テラヘルツ波"
(39)脳の"可塑性低下"うつ病の原因
(38)「医工学」が生んだ人工網膜
(37)未来技術の"予言"を一般公募
(36)感情スイッチで皮膚に紋様
(35)蛇のように膜でドライアイ防止
(34)未来の福祉ロボットのヒント
(33)他者の痛みが分かる「感情移入」能力
(32)セクシー美女が大バクチを呼ぶ
(31)骨伝導で語学学習や音楽を堪能
(30)体格と性格の相関をメタボ対策に応用
(29)お菓子感覚でキッズサプリ
(28)ご飯のお供にワクチンふりかけ
(27)歩くだけで5ワット! 人体発電機
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
