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大前研一の「IT時評」テレビCMの落ち込みの原因は

 テーマ1:在京民放キー局5社の2008年4―6月期決算は、スポットCMの落ち込みで、5社すべての経常利益が減益。日本テレビ、TBS、テレビ東京は売上高も減収となった。原油高などの先行き不透明感から企業がCMを控えたのが原因と分析している。

 景気が悪いからCMを控えたのではなく、効果がないものを削ろうという企業の判断だと思います。つまり、これは構造的な問題です。

 3社が減収とのことですが、私はこの3社よりもテレビ朝日のほうが問題は深刻だと思います。
 民放キー局5社の時価総額でテレ朝は4位ですが、5位のテレビ東京に追いあげられています。テレ朝は営業利益、純利益も落ちており、年間平均世帯視聴率では一時期、TBSを抜く勢いでしたが、いまは“万年4位”の座に戻っています。

 とくに問題なのは、売上構成です。テレビ放送事業そのものが大部分で、民放売り上げ1位のフジテレビと比べると、放送外収入の割合が低い。したがってCMの減少で放送事業収入が減ると苦しくなります。

 フジテレビは、イベントなどの放送外収入が売り上げの3割を占め、テレビ広告収入とそれ以外の収入がちょうど半々です。対してテレ朝は、放送事業と広告収入がいずれも8割に達しており、従来型の放送ビジネスに依存したままです。株価も低迷しており、このままいけば広告主のテレビ離れが続くなかでテレ朝が一番苦しくなるでしょう。

 テレビ放送は今後、通信に飲み込まれていくというのが私の持論です。通信インフラが高速化・デジタル化すると、まず視聴者や広告主のテレビ離れが始まります。動画投稿サイトやユーザー参加型のサイトなど、ウェブ2・0的なサービスに視聴者が時間を費やすようになり、広告収入に頼るテレビのビジネスモデルは崩壊します。

 実際に、ここ数年の世帯視聴率は年々落ちており、テレビ離れが実感できます。広告媒体としても、インターネットが急激に伸びており、新聞広告を抜いてテレビを狙う勢いです。

 そもそも、テレビ放送とインターネット放送のビジネスモデルは大きく違います。テレビ視聴率は、ごく一部の家庭に設置された機器で計測するもので、正確ではありません。一方、インターネット放送は、どの番組を誰が何時間視聴したかまで正確にわかります。広告に直接反応して注文してもらう、などの双方向性もあります。つまり、企業にとってはインターネットのほうが費用対効果が断然明確なのです。

 そんな状態で地上波がデジタル化してしまったら、完全に通信に飲み込まれてしまいます。少なくとも、いまの幕の内弁当のような放送内容では、たとえNHKといえども、やっていけないでしょう。

 したがって、今後はテレビも専門チャンネル化せざるを得ないと思います。そこで着目したいのは、各放送局が協力関係を結んでいる新聞社のコンテンツです。テレ朝なら朝日新聞とがっちり組み、新聞を購読している人たちを対象に、新聞の政治欄や文化欄の記事と連動した番組や記事をデジタルテレビで見られるようにするのです。記事だけでなく、求人や旅行などの広告もクリックひとつでさらに詳しい内容が見られるようにすればいいと思います。

 地デジ化されると、扱えるチャンネル数が増える可能性があります。それに対し、各局は従来の幕の内弁当的な放送をさらに増やすことで対応しようとしていますが、むしろ新聞の紙面別に連動して専門チャンネル化するほうが視聴者を集められると思います。

 ビジネス・ブレークスルー(スカイパーフェクTV!757チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

投稿日: 2008年09月05日

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