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中国—どうなる五輪後 待ち受ける苦の"清算"
過去に類がない“異色”ずくめの五輪が幕を閉じた。51個もの金メダルを獲得して圧倒的強さを見せた中国選手に、中国の国民は「加油(ジャーヨウ)!」と熱狂的声援を送り、自国賛美に徹した。そんな中国の異質さが世界に印象づけられた大会でもあった。五輪は中国に何をもたらしたのか? 五輪“清算”後に中国を待つものは何か? 中国を見続けてきたジャーナリスト、富坂聰氏と検証する。
■驚きの祭典
北京五輪の開幕式は圧巻だった。100億円の巨費を投じ、1万4000人が一糸乱れぬマスゲームで紙、活字、火薬、羅針盤という中国4大発明を表現。中華文明の偉大さをうたい上げた式典は、世界の目をくぎ付けにした。
だが、その後明らかになった内幕は、さらに世界を驚かせた。巨人の足形の花火が合成映像だったことが発覚。直後に、「天使の歌声」で魅了した少女(9)の歌声も別の少女のものだったと暴露された。極めつけは、国内56民族の衣装で行進し、「民族融和」をアピールした子供たちの大半が漢族だったこと。
海外メディアはヤラセを一斉に非難したが、富坂氏は「中国内では『何を責められているか分からない。事故を起こさないでよかったじゃないか』と受け止められている。一生懸命やればやるほど、国際社会の感覚とのズレ、異質さが出てしまう象徴的出来事だった」と解説する。
■「加油!」の嵐
懸命さゆえの異質さは応援に顕著に表れた。観客の「加油!」(頑張れ)との声援は地響きのように会場を揺らした。審判の声をかき消し、選手のペースを乱してもお構いなし。当局が強く禁じていた相手選手へのブーイングもたびたび起きた。
当局は黄色いシャツで統一した“模範応援団”を大量動員。双方の選手に平等に声援を送ってはサッと引き上げる光景が会場ごとに出現した。取り締まりにもかかわず、会場の外はダフ屋であふれた。
熱狂的応援は諸刃の剣にもなった。バドミントンで日本のスエマエ(末綱聡子、前田美順)ペアに敗れた中国ペアには非難が集中した。優勝を期待されながら棄権した陸上百十メートル障害の劉翔選手(25)には「恥」「逃げ劉」などの罵詈雑言が浴びせられた。
その一方で、若い中国人ボランティアに感銘した外国人も少なくない。中国に手厳しい石原慎太郎東京都知事も「とても親切で礼儀正しい」と称賛した。
「マナーは個人差が大きい。中国はこれまで画一的に見られてきたが、五輪をきっかけに、良い面とどうしようもない面がむき出しになった」(富坂氏)
■鎮静剤切れ
富坂氏は「いま、中国では『五輪が終わった後の“清算”が大変だ』との声が出ている。五輪で先送りにしてきた問題があまりに多い」と指摘する。
治安への懸念は昨年からすでに現れていた。中国語のサイトには「爆弾の作り方」といった情報が流れ、軍の施設から爆薬が持ち去られる事態もたびたび起きていたという。
今年に入り、警察の腐敗に対する暴動も頻発。五輪開幕前後には雲南省の連続バス爆破事件、新疆ウイグル自治区での警官隊32人殺傷事件、さらには容疑者を含む12人が死亡するテロなどが相次いだ。
これに対し、中国政府はテロリストを容赦なく射殺。五輪会場付近の不審者は片っ端から身柄を拘束した。デモを公認しながらデモの申請者を警察に引き渡したり、労働教育処分にした。
「政府が1つの政策を選択すれば、犠牲になる人が必ず現れ、不満をなくすことはできない。五輪という“鎮静剤”が効かなくなると、さらに暴動は激しさを増すだろう。『社会がどうなってもいい』と考える者にどう立ち向かうか、中国政府は正念場を迎える」(同)
■両極端の時代
五輪開幕の8日、世界の投資家に驚きが走った。これまで上昇を続けてきた上海市場の株価が1年7カ月ぶりの安値を記録。18日には昨秋の最高値の6割安まで落ちた。「五輪後に経済が落ち込む」と一部の投資家が逃げ出したのだ。
不動産市場の急速な冷え込みも深刻。物価の高騰は依然続いており、インフレと景気後退が同時に進むスタグフレーションの様相を見せ始めている。
政府統計によると、今年上半期に7万弱の中小企業が倒産。中国の輸出を引っ張ってきた紡績企業の3分の2も存続の危機に立たされているという。
富坂氏は「賃金高に加え、環境にも配慮せざるを得なくなり、『世界の生産基地』としての圧倒的優位がなくなる。石油や金融分野で世界を圧倒する企業がある一方、物価高で暮らしていけないレベルの人も出る。先進国としての“頭”に大衆という“体”がついていけない苦しみが幕を開ける」と予測する。
胡錦濤主席も五輪直前に「大きな挑戦と困難に直面している」と今後の経済に危機感を示した。
富坂氏は言う。「労働力の面でメリットだった13億の人口が、大きな負担になる。いいところは極端に良く、悪いところは極端に悪い両極端が併存する時代に入る。経済成長は鈍化し、犠牲になる人が増すだろうが、社会がどこまで耐えられるか。胡政権は大きな舵の転換を迫られている」
