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瀬名秀明「イヴのみる夢」(49)色覚異常を再現する眼鏡
むかし、学校で「石原式色覚異常検査表」を見たことがあるだろう。豊橋技術科学大学の中内茂樹教授らが開発した眼鏡をかけて絵を見てみよう。たくさんの点から浮かび上がっている数字は「3」だが、眼鏡を外すと「8」が見えてびっくりする。この眼鏡「バリアントール」は色弱の人がどのように見えているかを疑似体験できるフィルターなのだ。
人の網膜には光の波長によって感度の異なる3種類の錐体細胞があるのだが、このうち一種類が他の細胞と同じ感度を持ってしまい、色の区別が難しくなってしまうのが色覚異常だ。全国で300万人以上、とくに男性では20人にひとりの割合といわれている。最近では小学校での色覚検診も義務ではなくなり、職業制限も緩和されつつあるが、日常生活で色覚異常の人が受ける不便はまだ多い。
青信号はふつうの白色の街路灯(白熱水銀灯)と同じに見えてしまう。防災マップの色分けも、ふつうの人なら難なく区別できても、色弱の人にはほとんどわからない場合がある。とっさの災害時に誤った判断をしてしまいかねない。そこで多様な色覚を持つ人に配慮し、なるべく多くの人にわかりやすい色彩デザインを心がけることが、とくに公共施設の表示には求められているのだ。
色覚異常を再現するには、高度な真空蒸着技術で光学フィルターをつくらなければならない。中内教授らは地元企業と共同してこれを実現させた。全国的にも初の成果で、2007年にはグッドデザイン賞を受賞した。
「色弱はそもそも問題が知られていないのが最大の問題。眼鏡をかけるだけで何が見えにくいか体感できるのがいちばん大きい」と中内教授。
広告代理店や公共機関からの購入だけでなく、色弱のお子さんを持つ親からの問い合わせも多かったという。子どもといっしょの目で世界を見たいという願いである。
色やかたちを工夫して、誰もがわかりやすいカラーユニバーサルデザインを実現させよう。日本の技術がその未来を支えている。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(48)メタボ救う「オスモチン」
(47)静脈瘤を"透視"せよ
(46)脊椎損傷救う"変化する細胞"
(45)iPS細胞使い遺伝子に合う薬選択
(44)iPS細胞を安全、簡単に
(43)再生医療の未来をひらく(3)
(42)再生医療の未来をひらく(2)
(41)再生医療の未来をひらく(1)
(40)応用範囲広し"テラヘルツ波"
(39)脳の"可塑性低下"うつ病の原因
(38)「医工学」が生んだ人工網膜
(37)未来技術の"予言"を一般公募
(36)感情スイッチで皮膚に紋様
(35)蛇のように膜でドライアイ防止
(34)未来の福祉ロボットのヒント
(33)他者の痛みが分かる「感情移入」能力
(32)セクシー美女が大バクチを呼ぶ
(31)骨伝導で語学学習や音楽を堪能
(30)体格と性格の相関をメタボ対策に応用
(29)お菓子感覚でキッズサプリ
(28)ご飯のお供にワクチンふりかけ
(27)歩くだけで5ワット! 人体発電機
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
