この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
「トレインショップ」の脱力系商品
出張族の楽しみといえば、移動中の列車内でのささやかな一杯と仮眠。だが、毎回ビール飲んで寝るだけじゃ面白くない。ちょっと視線を車窓から離し、前方を見てほしい。前席の後方に「TrainShop」なる冊子が挟まれているのに気づくだろう。一見、ただの通販冊子のように見えるが、その中身が実に濃い。目からウロコの逸品から腰砕けになりそうな“脱力系”商品まで、てんこ盛りなのだ。実際、売れ筋も一般の通販商品とはかなり異なるらしい。人気商品と、その冊子製作の舞台裏を紹介しよう。
出張の多いサラリーマンなら一度は開いてみたことがあるだろう「トレイン・ショップ」。これはJR東日本の各新幹線や一部在来線の特急に配置されている通販カタログだ。
公共交通機関に設置されているカタログとしては、日本航空の「JAL SHOP」や全日空の「ANA SKY SHOP」などがある。
「航空系」のカタログは女性や富裕層を狙い、限定品や高級品をラインアップしているが、「トレイン・ショップ」はその対極。約120ページの誌面のほとんどを商品紹介に費やし、その商品がいずれも妙にマニアックなのだ。
どうマニアックかは、今年8―9月の「トレイン・ショップ」売り上げベスト10をご覧いただければ一目瞭然だ。
たとえば、6位の「光触媒枯れない『アートさかき』一対」は、仏事に供えるさかきの造花で、《水替えの手間がいらない》《倒れても水がこぼれない》が売り―という超ニッチな商品。新幹線の乗客相手に、こんな商品を売ろうと考えるのもすごいが、買う人がいるというのも考えてみればすごい話だ。
10位の「朝までクール冷却ジェルパッド」は、発熱時におなじみの冷却パッドの巨大版。ベッドの下に敷き詰めて《熱帯夜もひんやーり》らしい。が、空調の効いた新幹線や特急列車の中で果たして欲しくなる商品なのか…。
失礼ながら、1位から10位までの商品は、そのネーミングも機能も、すべてがユルく、マニアックである。一体なぜ、こうした商品カタログが新幹線の中に置かれ、しかもよく売れているのだろうか?
「トレイン・ショップ」の製作から販売までを一手に引き受けるのは、JR東日本商事(東京都渋谷区)。企画を担当する同社営業本部通販部の女性社員(37)が、製作の舞台裏を語ってくれた。
「商品は5、6人のチームが鉄道、食品、日用雑貨、紳士物衣料品、防犯グッズなどのカテゴリーから選定しています。他の通販媒体やメーカーの展示会を参考に掲載商品を選び出します。日ごろの生活シーンを想像しながら、これがあるとちょっと便利だな、といった“発見”のある商品を意識的に探しています」
顧客のメーンターゲットは30代から50代のサラリーマン。だが、選定チームのメンバーは意外にも「20代から30代の男女」と若い。この小人数で、カタログの編集までこなすという。
「うちはインターネットサイトも展開していますが、カタログを見てアクセスしてくる人が圧倒的に多い。まずは雑誌的感覚でカタログをいかに読ませるか、が勝負です。ただ、ユニークさとオリジナリティー、コストパフォーマンスと三拍子そろった商品を見つけるのは難しいですよ」(同)
足で稼いで見つけ出した商品は、ざっと500点(8―9月号掲載商品)。なるほど、これだけあると珍品が混じるのも無理はないか…。
「一見、採算度外視で、ふざけて掲載しているようでも、マーケティングは綿密にしています。自分たちにとって楽しい商品を選ぶこともありますが、独りよがりではダメですね」
そんななか、やはり売れ筋は鉄道グッズ。列車内の通販だけに、当然といえば当然だが。
「売れ行き1位の『京浜東北線駅メロ目覚まし時計』は山手線、中央線と発売している鉄道グッズの第3弾。鉄道グッズはマニア層の支持が高いロングラン商品です」
列車内という閉ざされた空間、移動して他の場所に行く非日常感などが、ふだんの買い物とは異なる物欲を刺激するのかもしれない。
通販評論家の村山らむね氏は「トレイン・ショップで取り上げている商品は、新聞の日曜版などにある通販カタログの中でも見落としがちなものをラインアップした印象。掲載商品は一見バラバラのようですが、乗り物の中ということで安全性をキーワードにした防犯グッズを紹介するなどコンセプトは統一されています。それも読者を引き込む一因でしょう」と語っている。

