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出世競争に巻き込まれ「頸動脈狭窄」
Cさん(50)は“命拾い”をした。偶然見つかった体の異常と、見つけた医師がその病気の専門家だった―という2つの偶然が重ならなければ、彼の人生は終わっていたかもしれない。Cさんの命を崖っぷちまで追いつめていたものは―。
ある作業会社の支店で次長を務めるCさんは今の役職に満足していた。ところが社内人事に巻き込まれ、支店長候補に担ぎ出される。当選確実と噂されたが、結果は惜敗。役職の上ではCさんの下にいた男が、2階級特進で支店長の座を射止めた。
元々出世に興味のなかったCさんだが、要らぬ競争に巻き込まれたことでストレスが増大。心身ともに疲弊した彼は、近所の診療所を受診する。
疲労以外の症状は特にないが、ストレスでたばこの量が増え、せき込むことが多くなってはいた。しかし、彼を診た医師は、意外な診断を下す。「頸動脈狭窄症」だ。
「脳に血流を送る血管が狭くなるだけでなく、血管の内壁にこびりついた血栓が剥がれて脳に飛ぶと脳梗塞になる危険性もある」と解説する虎の門病院血管内治療科の松丸祐司部長は、ストレスとの因果関係を指摘する。
「ストレスと喫煙が重なれば、血管の収縮度合いは大幅に高まる。これに暴飲暴食でも加われば、血管にとって最悪の状態を招くことになります」。
しかし、Cさんにとってラッキーなのは、彼を診た医師の専門が脳神経外科だったこと。血液検査などは正常値だったが、たまたま首に当てた聴診器の音で異常を察知し、超音波検査を勧めたことが発見につながった。
「脳の専門医なら、首の血流の音で頸動脈の異常がわかる」と松丸医師。逆に、脳外科医でなければ、頸動脈の音なんて聴こうとさえしなかった可能性もある。
すぐに病院を紹介され、カテーテルによる血管内治療で事なきを得た。今はたばこもやめて、血管の状態も良好だ。
「命拾いしただけでも騒動に巻き込まれた甲斐があるね」と苦笑するCさん。でも、巻き込まれなければ、ストレスを感じることもなかったはず。運がいいやら悪いやら…。
