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汁講―武士の質素な"お座敷パーティー"
戦国時代から江戸時代の初期にかけて、武士の間で「汁講」がはやった。いってみればみそ汁パーティー。「汁講をいたしましょう」といって客を招くと、客はめいめい木製の弁当箱に飯だけを詰め、それをぶら下げてやってくる。
招待者側が用意するのはカブや大根のみそ汁だけ。これを鍋ごと座敷に出す。客はその汁で持参してきた飯を食べ、「美味にてござる」ともてはやす。ほかには何のごちそうもない。
しかし、気心の通じ合った同士だから、これでも立派なお座敷パーティーとなった。たまに、濁り酒が出れば「オオッ」と歓声があがった。こうして合戦自慢や世間話に花を咲かせながら、夜が更けるまで愉快に過ごしたのである。
しかし、江戸時代になってぜいたくな社会になると、戦国的な風習はすたれていく。あまりにも質素すぎて貧乏くさいのだ。それを惜しんだのが水戸の黄門様で有名な徳川光圀(1628―1700)である。
当時の記録によれば、ぜいたくざんまいになった武士たちの生活を憂い、昔の汁講を復活させようとしたが、実現する前に残念ながら病死してしまう。汁講は、東北地方で秋に行われる「芋煮鍋」みたいなものだから、たいへんな健康料理であった。
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現代の汁講
東北では芋煮会たけなわである。河川敷に出ると煙をあげて盛大だ。風邪のはやる冬が来る前に腹一杯食べて、体力をつけておこうという知恵だ。
サトイモ、大根、ニンジン、シイタケ、牛肉、豚肉などをじっくりと煮込んで食べる。酒を飲む。さァ、現代のサムライたちよ。合戦の前に汁講だ。
(食文化史研究家・永山久夫)
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