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おっとり刀―「ゆっくり」でなく「大急ぎ」

 もう20年以上も前の、あるラジオ番組でのことだ。「おっとり刀で駆けつける」の意味について10人の女子大生全員が「ゆっくりと駆けつける」ことだと答え、大変驚かされたことがあった。
 「おっとり刀」は漢字で「押っ取り刀」と書く。武士が刀を腰にさす間もなく急いで手に取ることから、「おっとり刀で駆けつける」とは「大急ぎで駆けつける」ことを表す。

 なぜ正反対の「ゆっくりと」の意味に誤解してしまうかといえば、「おっとりした性格」「おっとり構える」などと使われる「おっとり」と混同するからだろう。こちらの「おっとり」は「ゆったりしているさま、おおようなさま」をいう。
 同様に勘違いしやすいのが「やおら」だ。「やおら立ち上がる」という表現を「急いで…」と取り違える人が多い。平成18年度の文化庁「国語に関する世論調査」でも、本来の意味である「ゆっくりと」と答えた人が40・5%、「急に」と答えた人が43・7%と、誤答がわずかながら正答を上回った。
 こちらの勘違いの原因は、あくまで推測ながら、「いきなり」の意の「やにわに」と混同するせいかと思われる。いや何より、「おっとり刀」も「やおら」も、今日では日常的に用いられることがなくなったのが、誤解の最大原因に違いない。
  (産経新聞編集局校閲部長・清湖口敏)

投稿日: 2008年10月10日

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